【森友問題】会計検査院の検査結果は?(Part-3)
今回は、前回に引き続き、森友問題に対する「会計検査院の検査結果は?」に関する記事です。
本シリーズでは、
といった内容について、会計検査院の公表資料をもとに、解説しております。
では、早速、見ていきましょう。
出典:「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査院の検査結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/301206_sonogo_01.pdf
(前回までの記事はこちら)
会計検査院が検査対象とした事項
それでは、会計検査院は、どのような事項を検査したのでしょうか。
主な検査事項は、以下のとおりです。
- 決裁文書改ざんの実態
- 国有地の貸付や売却の経緯
- 国有地の貸付価格や売却額の妥当性
- 職員の懲戒処分の妥当性
上記1「決裁文書改ざんの実態」及び上記2「国有地の貸付価格や売却額の妥当性」については、前回の記事で説明したとおりですので、今回は省略します。
(あわせて読みたい記事はこちら)
今回は、上記3「国有地の貸付価格や売却額の妥当性」について、説明したいと思います。
「貸付価格」の妥当性はどうか?
①「軟弱地盤であること」が前提だったのか否か
本件の争点は、上記のとおり、貸付価格を決定するにあたって、
「軟弱地盤であること」を土地評価の前提条件としていたかどうか
ということです。
以下、整理します。
国の場合、国有地を誰かに貸し付ける場合には、「適正な価格」をもって貸し付けることとされています。
そして、「適正な価格」というのは、国家資格をもった専門家である「不動産鑑定士」に依頼し、決定(評価)してもらった価格となります。
不動産鑑定士は、不当な評価をした場合には、法律によって、罰金や資格はく奪など、罰則が科せられるため、正当な評価を行わなければなりません。
本件についても、財務省は、森友学園への貸付価格を決定するにあたっては、「不動産鑑定士」に依頼し、土地の価格を決定してもらっています。
ここで、問題となったのが、不動産鑑定士に依頼するにあたっての「前提条件」が妥当だったのか?ということです。
財務省は、不動産鑑定士への依頼にあたって、「土地のボーリング調査の結果に基づき、鑑定評価を行うこと」という条件を付しております。
このことが、「財務省が、軟弱地盤であることを前提として、不動産鑑定士に評価させ、土地の価格を恣意的に下げたのではないか」という議論を生みました。
これに対し、会計検査院の見解は、以下のとおりです。
ボーリング調査結果をもとに、軟弱地盤かどうかを判断するのは、あくまで不動産鑑定士であり、財務省がその判断に入り込む余地はない
という財務省の意見を引用し、
「本件土地が軟弱地盤であることを前提に依頼したことは、不動産鑑定評価結果へ影響を与えていたとは認められなかった。」
としています。
②概算額を事前に提示していたのは、不適切ではなかったのか
ここから、次の話題に移ります。
まず、事実関係を整理します。
通常、国有地を貸し付ける場合は、入札や見積合わせを行い、財務省が想定する価格(すなわち、不動産鑑定評価額)を上回った場合にのみ、貸すこととなります。
つまり、財務省が不動産鑑定士に算定させた価格は、あくまで「最低価格」ということになります(これを法律用語的には「予定価格」といいます)。
国としては、より多くの歳入を確保することが合理的であることから、このような制度となっています。
そして、入札や見積合わせを行うにあたっては、事前に「予定価格」を非公開とするのが原則です。
これは、相手方に予定価格を知られることによって、予定価格と「ピッタリ」の価格で入札が行われることを防止するためです。
国としては、より多くの歳入を確保することが、公共の福祉にとって合理的だからです。
なお、注意しておきたいのは、随意契約の場合は、「予定価格を公表してはいけない」という決まりはないということです。
本件は、「随意契約」による処理であることから、財務省が森友学園に対して、予定価格を、「概算額」という形で相手方に教えています。
この点について、会計検査院が財務省に説明を求めたところ、以下のとおりでした。
(財務省)
- 予定価格そのものではなく、公示価格などの公表されている情報から、水準や相場観を伝えただけ。
- そもそも、随意契約の場合は、予定価格を相手方に伝えることは許容されている。
- 見積合わせを行ったとしても、森友学園が予定価格よりも低い金額となることが予想されており、見込みのない見積合わせを何度もやり直すことは、非効率的である。
これらに関して、会計検査院の見解は以下のとおりです。
随意契約の場合は、予定価格やこれを類推させる情報を相手方に伝えることを禁止する規定はないが、国としてできるだけ有利な価格により契約を締結するよう努力するべきだった。
本日の記事は、ここまでです。
次回の記事では、「売却額の妥当性」について触れていきたいと思います。
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